日本人のルーツ【体験談編】
あなたは、この日本において『国籍を持たない人々がいる』ことを知っていますか?
今回は、私の実際の体験談を元に日本国内に目を向けてみたいと思います。
北海道
私は小学6年生の夏休みの時に、友達の両親の故郷であった北海道の北の地域(ここでは敢えて場所は伏せます)の彼の親戚の家に1ヶ月間一緒に住み込んだ。
雄大な大地、清んだ空気、美味しい食事、おおらかな人々、まさに色んな物事に感動し、圧倒された。
しかし、私は感受性豊かな小学生の感想を皆さんに伝えたいわけではない。
私が伝えたいのは、その滞在期間中に遭遇した奇妙な体験である。
訪問者
ある日のこと。私が住み込んでいた友人の親戚の家に二人の親子が訪れた。
恐らく母親と、そして恐らくその娘。母親は20代後半、娘は7~8才といった感じに見えた。
その二人に対応したのは友達の親戚のおばちゃん。
私はそのおばちゃんと、訪れた母親のやり取りにとてつもない違和感を感じた。
なぜなら、二人には会話がなかったからである。
物々交換
おばちゃんと訪問者の母親は、手慣れた感じで笑顔を交わしながら食料の物々交換を始めた。
えっ!? 何が行われてるの!?
そして、
えっ!? なぜ会話がないの!?
私はその光景をただただ見届けるしかなかった。
とてつもない疑問
全てが終わると、訪問者の母親は笑顔でおばちゃんや私に会釈をした。娘さんも母親に促され、はにかみながら会釈した。
私は幼少期、極度の内気な性格で、自分から他人に話しかけることがほとんど出来なかった。そんな私でもさすがにおばちゃんに質問せざるを得なかった。
『おばちゃん、今の人達は何だったの!?』
私は心の中に沸き上がったとてつもない疑問をストレートにおばちゃんにぶつけた。
あなご
「ああ、あの人達は季節の折々に季節のものを持ってきて、米と交換していくんだよ。」
「えっ!? 米と交換!?」
「うん、この時期はあなごだね。今夜は美味しいあなご丼を食べようね。」
「なんで何もしゃべらなかったの?」
おばちゃんが『やれやれ』という顔を僕に向けた。
「あの人達は、日本語を話せないの。普段は山奥に住んでいるの。」
「山奥? 話せない?」
「うん。あの人達はそういう暮らしをずっとしてきてるの。だから、あの一緒にいた小さい子は、学校に通ってないのよ。」
「学校に行かない!?」
僕はおばちゃんの回答を聞いても、何が何だかさっぱり理解出来なかった。ただただ、あの女の子が
『学校に行ってない』
そして
『同じ日本人のように見えるのに日本語を話さない』
という事実に大きな衝撃を覚え、『可愛そう』とも同時に思った。僕は何か聞いてはいけないことを聞いてしまったのかもしれない、と子供ながらに感じていた。
その晩からは、約2週間連続で『あなご丼』が続いたが、非常に美味しく飽きがこなかった。
若さとは凄いものである。今回の出来事に対する疑念など、その2週間の間にすっかり消え去ってしまうのである。
その後、大人になって私は知るのである。
私とは違う血統で、この日本に脈々と生きてきた、
国籍を持たない
『まつろわない人々』がいる
ということを。
(注)私は当初、「あなご」のことを「八つ目うなぎ」と書いた。若かりし日々の記憶を思い出すのは非常に困難であるw